漂泊の王の伝説



ラウラ・ガジェゴ・ガルシア「漂泊の王の伝説」読了。

いやあこれ面白かった!!
久々にページを繰る手が止まらない、ぐいぐい読ませる
実力のある本に逢いました。
Wikiを見てみたら、どうやらこれ作者が22~3歳の時の作品みたいで
びっくりだよ・・・。


砂漠の小さな王国の王子・ワリードと、貧しい絨毯織りの男、そして
絨毯織りが織った「この世のものではない」絨毯を巡る運命の物語。

もうとにかく、王子が抱える暗い嫉妬心による陰湿なイジメによって
絨毯織りが正気を失っていく過程がぞくぞくします。

最初から最後まですごくドラマチックな展開で
要所要所で「運命」というワードが出てくるんだけど、
それはすべて登場人物のこういう行動・心理によって引き起こされたものですよ、
という、ロジカルな「運命」の描かれ方です。

ロジカル・・て表現はおかしいかなあ、
「因果応報」というのが近いかもしれない。
原著ではどういうニュアンスのワードなのかなあ。

子供向けのファンタジーなのに、
主人公のワリードが徹底的に「ヤなヤツ」で、これがなんというか
大人にはツラい。

子供の目線なら「うわーなにコイツ!むかつく!」とか憤慨するところでしょうが
ワリードの「ヤな」ところというのは、嫉妬、支配欲、優越感、のような、
人間が誰しもが持っている、醜い負の部分。

大人はそれを自覚している分、ワリードの振る舞いが心をえぐるんですよ。
「もうやめて!!そんなことしても後で辛い目に遭うのはあなたですよ!!」
と何度叫びそうになったことか・・・。

中盤~後半はワリードが、己がしたことの代償として、自らの運命を
受け入れて「漂泊の王」となるわけなんだけど、
これも「ヤなヤツ」から改心して急に「いいヤツ」になるわけではなく、
楽になろうとしたり、忘れようとしたりして常に「迷い」がある。
それだけに、ラストにかけてのカタルシスが気持ちよかったな~。

子供の頃に読んでいたら、きっとものすごい衝撃だったと思う。
ただ、大人は大人なりの楽しみ方が出来ると思うので
年齢関係なくおすすめしたい傑作ですわ。



待ってる 橘屋草子


あさのあつこ「待ってる 橘屋草子」読了。もういっちょ江戸もの。
江戸で評判の料理茶屋“橘屋”で奉公を始めた12歳のおふく、
女中頭のお多代を中心に、橘屋に関わる人々の生き様を描くオムニバス。

いやーこれ良かった。面白かったです。
2009年刊行か。amazonの書評も1件しかないね。
もっと評判になってもいいと思うのになあ。

こっちはミステリ要素はないものの、
どんな苦労や悲しみを背負っても、わずかな希望にしがみつくようにして
必死で生きている人たちのドラマがとても胸に迫ります。

特に、幼い頃の怪我で体が不自由になり、
まともな職にも就けず、家族も崩壊した三太の物語、
「桜、時雨れる」は今の日本の現状と照らし合わせても
色々と考えさせられるものがあったなあ。

全編を通じてのキーパーソンである女中頭のお多代さんが
すっごいかっこいい!めちゃくちゃいい女なのです。
おふくちゃんも、お多代さんの跡を継いできっといい女に!

ところでこれも、おふくちゃんと某さんがくっつきそうで
くっつかないんですが、あさのさんは焦らしプレイがお好きですか!?
しやわせになった2人が見たいじゃないのさああ。・゚(゚⊃ω⊂゚)゚・。


囚われちゃったお姫さま―魔法の森〈1〉 (sogen bookland)


これめちゃめちゃ面白かったー!
これも訳者さんのセンスが光る翻訳でした。
一応児童書というかヤングアダルト向けの作品なのですが、
子供にもわかりやすく、かといって冗長な解説めいたところはなく、
笑わせるところは笑わせる、言葉選びが秀逸でテンポも良くて、
ほんとに気持ちよく読めました。
(某有名ファンタジーシリーズの翻訳もこの人に依頼すればいいのに・・ボソッ

とある平和な国の末っ子姫・シモリーンは
剣術・ラテン語・経済学に魔法にお料理という「お姫様らしくない」
ことにばかり夢中になる女の子。
めでたく隣国のめっちゃハンサム(だけ。頭はいまいち)王子と結婚が決まるも
「そんなのいや!」と、家出をした挙句
自分から希望してドラゴンの「囚われの姫」になります。

このシモリーン姫がめっちゃかわいいw
女子なら誰もがうっとりするハンサム王子に対しても、
「ユーモアのセンスがないでしょ、知性がないでしょ」
とかもうケチョカスに言いますよ。
ドラゴンのカズールとは意気投合しちゃって
お城にいる時よりはるかにイキイキして囚われ姫ライフをエンジョイしてるしね!

やー、面白かったですわー。
昨今流行りのアレとかアレとか、やたらダークな設定ばかりのファンタジーに
うんざりしてる方におすすめしたい(*´pq`*)
このシリーズ全部で4冊あるらしくて、全部翻訳されているので順番に読むよ!


Twitterでやたらと絶賛されていた
山内マリコさんの「ここは退屈迎えに来て」も買ったので楽しみに取ってあります。
こういう具合に、片付けても片付けても本があふれるよ!魔法の部屋か!


遠い町から来た話


去年話題になった「アライバル」の作者、ショーン・タンの作品集。
アライバルもちゃんと読んでないんですが、タイトルでこれに惹かれたので借りてみました。

こういう大人向けの絵本でちょっとシニカルなテイストというと
ぱっと浮かぶのはエドワード・ゴーリーだけど
(大好きですゴーリー(*´ェ`*)
ゴーリーのような毒気はなく、どっちかっていうと“いい話”が多い。

「一家に一台ミサイルが支給される時代」なんていうドキッとする設定も
あるんですが、ものすごくのんびりしたオチがついてくるし。
お話はどれもすごく良かったですね。あと訳(岸本佐知子さん)も。
こういうのってセンスがない人が訳すとほんとどうしようもなくなるからな・・。

絵はタッチも色も話によって色々で、ものすごく引き出しの多い人なのか、
「色々試してやってやろう」みたいなエネルギーも感じました。
「エリック」「名前のない祝日」が特にお気に入り。




食うものは食われる夜

紅水晶


蜂飼耳「食うものは食われる夜」「紅水晶」読了。


「うきわねこ」っていうお気に入りの絵本がありまして、
(これめっちゃ可愛いので!可愛すぎて悶絶するので是非読んでほしい)

うきわねこうきわねこ
(2011/07)
蜂飼 耳

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この方はどういう方なのかなーと思って調べたら、
中原中也賞とかをお取りになってる詩人さんなんですね。
まずもう、「蜂飼耳」ってペンネームがすばらしくすてき。

絵本の他にも、詩集や小説も出してらっしゃるということで
詩集と小説とを借りて読んでみました。

詩ってもともとほとんど読まない(特に現代詩)んで
いわゆる自由詩の言葉運びに面食らう。
「誰にも見えない降伏の旗」の出だし部分。

非常用のごはんなら まだある 牡蠣フライなら まだ
予告された摩擦は 足早に過ぎ なにもなくてよかったね (p56)


うん・・?
音韻がどうとか、味わいがどうとかもっともらしいこと言えないんですけど
わたしはすごく好きです。
解釈がどうこう、とかシチュエーションを想像するより、
ただぼんやり言葉に弄ばれてる感、を楽しむかんじ。

で、期待して短編集「紅水晶」を読んでみたのですが
これがちょっと・・・。わりとエログロな要素が強くて読むのに疲れました。
中山可穂さんとか、梨木香歩さんのドロっとしたところ、
ああいうかんじがわりと延々続く。全体的に薄暗いです。
あと出てくる男がみんな最低野郎で・・。救いもあんまりないw

5編の短編からなる本なんですが、5編すべてが森とか石とか虫とか
そういうものが話の中心にあって、その描写がものすごい濃くて息苦しい。
ペンネームからしても、そういうものにどうしようもなく惹かれる方なんでしょうね。
うーん、ちょっと、読むのに疲れるのでわたしは苦手ですね・・。
期待していただけに、残念。。。。