愛の国 (単行本)


弾圧の暗い影、獄中のタンゴ、刻み込まれた愛の刻印。愛する人も記憶も失い、自分が何者なのかを問いながら彼女は巡礼路を歩き続ける。十字架を背負い、苛酷な運命に翻弄され、四国遍路からスペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ。衝撃のデビュー作『猫背の王子』から20年―底なしに愛し、どこまでも闘う主人公ミチルに待ち受ける愛と死、罪と罰、天国と地獄を渾身の筆で描ききった恋愛小説の金字塔!王寺ミチル三部作完結篇。

この人の書くものは沼っぽいと思う。
ストーリーと、そこに込められた情念みたいなものに引きずられて、
気がつくとどっぷり沈んでしまって、なかなか這い上がれない。
読むのにとてもエネルギーが要る。


二十代そこそこの頃は、中山さんの著作を読むたびに鬱っぽくなったり
情緒不安定になったりしていた。
とにかく、愛とか情とか業とか、“執着”が強すぎる人たちばっかりが出てきて、
その癖、必ずといっていいほど自ら破滅を選ぶような話が多い。


王寺ミチルといえばその愛と破滅のアイコンみたいなキャラクターで、
「ファシスト政権が支配する、同性愛者が迫害される近未来(パラレル)日本」
という設定の今作では、前2作をはるかに凌ぐいばらの道っぷり。

正直、この人のファンを自認していても、荒唐無稽とギリギリ紙一重なストーリー展開と、
あまりにも芝居がかった台詞、耽美すぎる人物描写に時々引いてしまうことがあるんだけど、
今回はそういうものを吹っ飛ばしていくパワーがあって、今までの引き込まれ方とは
どこか違うものがあった。

あとがきを読んで、中山さんも相当な覚悟で書き上げたのだと実感し、
胸を突かれた。

去年、 『悲歌』の文庫版のショッキングな後書きを読んでいたから、
新作を、しかもミチルの完結篇でこんな大作を読めて、心底よかったと思う。


どうかまた、この先も、中山さんの作品に出会えますように。
 







10/19日、南船場にある文学バー「リズール」で行われた
“クリエイターズ・ネスト”というトークイベントに参加してきました!


ゲストは第34回日本SF大賞を受賞した酉島伝法さん。
「皆勤の徒」がものすごい衝撃だったので、これはもう行くしかないね!


酉島伝法さんの公式ブログ:棺詰工場のシーラカンス
酉島伝法(∴)とりしまでんぽう Twitter (@dempow)


 以下はイベントの模様をまとめたレポです。
※酉島さんの許可を得て掲載しております※



●受付~店内へ●


店の外の受付で、酉島さん自ら朗読される「SFマガジン2014年4月号」掲載の
「環刑錮」の抜粋資料と、社長栞をいただく。(※冒頭の写真)
なお、受付がなんと吉村萬壱さんだったのですが、わたくし帰りの電車の中で
酉島さんのTwitterを見るまでそのことに気付かず orz

書店主催のサイン会には何度か参加した経験はあるのですが、
こういったお店でやる小規模トークイベントは初めてで、あの、


ち、ちかい!ものすごく近い!


バーカウンターを挟んで手を伸ばせば握手できるような距離に酉島さんが!!!(;꒪ꈊ꒪;)


トーク開始前、なんとなく店内の雰囲気も硬いような印象だったのですが
(自分が緊張してたせいかも)
進行の玄月さん、さすが慣れていらっしゃる。

開始の挨拶で
「いやー、今日は本当にいい天気でね、雲一つない爽やかなこういう日にね、わざわざ地下でこういう話を聞こうっていう変態の方々においでいただいて」
というところで一同ドッと爆笑。

これで緊張がほぐれて、あとは終始リラックスしてお話を聞くことが
できました~。°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°


●酉島さん登場~「環刑錮」朗読●


いよいよ酉島さんご登場、「環刑錮」のざっくりしたあらすじを説明してくださった後、
ご本人による朗読!
 (※「環刑錮」はSFマガジン2014年4月号に掲載)


S-Fマガジン 2014年 04月号 [雑誌]

早川書房 (2014-02-25)


酉島さん、舞台の経験が?と思うほど朗読がお上手でした!
びっくりした~。

「環刑錮」は酉島さんいわく「初めてちゃんとした人間を書きました!」
とのことですが、いや、やっぱり意味がわからないですww

玄月さんは「意味は分かんないんだけど、なんか、東北とかの方言みたいにも聞こえるね」
とコメントされてましたが、わたしは能とか狂言とか、そっちっぽい印象を受けました。
日本語じゃないという気はしないんだけど、言葉の意味はわからないし、
節回しが独特で、すごく不思議な印象。



●創作について~文章とスケッチと●



固有名詞のほとんどが造語という、あの独特な世界はどうやって作られているのか?
という話になり、

酉島さん「一瞬でパッと思いつくと思ってる人がたまにいるんですけど、 
      造語用のテキストファイルがあるんですよ」

とのこと。 

小説を書く時は、 文章だけでなくスケッチを描いてイメージを作っているが、
文章⇔スケッチを互いにフィードバックしていて、スケッチを描いてみて初めて、
「そーだったのか!」ってなる時もあるそう。
文章を起こすのとスケッチは別回路で、文章のほうがしんどいらしい。


ここでなんと、0.3mmのシャーペンを使った「洞の街」のスケッチのほか、
螺導をはじめとする登場人物のラフ画などの貴重な資料を参加者全員に
回覧してくださったので、直に手に取って拝見することができました!

スケッチの細かさときたらもう、ため息しか出ない・・・(*⁰▿⁰*)
エドワード・ゴーリーの原画を見た時も、あまりの線の細かさに眩暈がしたんだけど、
それを上回る精密さ。

酉島さん「最近、さらに細い0.2mmのシャーペンが発売になったので、
       NOVA+の挿画はそれで描きました」



●みんな大好き百々似●


百々似のイメージについて。

酉島さん「「洞の街」を書いている時、「何か落とさないと(降ってこないと)」
       っていうシーンで、その時TVでやっていた雪下ろしのシーンを見て
      「これが全部虫だったらおもしろいな~」と」

“ももんじ”という音は「もんもんじい」「ももんじや」など複数のものから着想。

ももんじや、って落語か何かで聞いた覚えがあるな~と思ってお話を聞いてたのですが、
後日調べたところ、江戸時代、イノシシ・シカ・タヌキなどの獣肉を売る店、
またはその商人をいうそうです。

ももんじという語は百獣(ももじゅう)の転訛という説があり、毛深い化け物などの意味にも用いられた

と『日本大百科全書』に記載があったので、
鳥山石燕の妖怪画にある「百々爺」とかも、この語感からのイメージなのかも?

「百々似隊商」はメルヴィルの『白鯨』と、アプトン・シンクレアの『ジャングル』(シカゴの食肉産業の小説)がヒントになっているとのこと。

アプトン・シンクレアの名を初めて知りましたが、ちょっと調べてみたら
すごく面白そうだったので、小説も映画もチェックしたい~。


百々似のラフ画も見せていただいたのですが、イラストのまわりに走り書きで
「ちょっと湿っている」って書いてあったのがツボw

酉島さん「百々似は最初はもっと芋虫っぽかったんだけど、
      描いてるうちにだんだん愛くるしくなっていって・・・」
  

百々似かわいいよ!あいくるしい!!!(*゚∀゚)=3
わたし大好きですももんじ!!



●「皆勤の徒」は私小説●


表題作「皆勤の徒」についてのお話で、衝撃の一言が。

酉島さん「ほぼ私小説です。ほぼ実話です。」

 

!?( º言º; )


どよめく参加者たち。(そりゃそうだ・・・)


「皆勤の徒」は刷版(CTP)の仕事をしていて一番しんどかった時期に
書いたものだそうで。

酉島さん「一番忙しい時に社長が酔っぱらって帰ってくるんですよ」


それがあの社長か。


土師部にもモデルがいるそうです・・・。うわあ・・・・。



●小説家になるまで~円城さん登場●


小説家としてデビューするまでの道のりのお話。
初めて小説を書いたのは小学生くらいで、ドリトル先生のパロデイみたいなもの(!)
だったそう。
本格的に書き始めたのは二十代後半で、11年くらい文学賞に応募されていたと。
最初は文学界や群像に送っていたが通らず、路線を変えてファンタジーノベル大賞に
出したらいきなり一次が通ったので、「あ、こっち系かな、と」。

酉島さん「ちょうど、円城さんが書いてるようなものが書きたかったんですよ。
      でも、円城さんのデビュー作を読んで 
     「こんなおかしいもの書けない!」と思ってあきらめました。」


酉島さんのご友人ということで、円城塔さんも参加者として
その場にいらっしゃったのですが、トークに飛び入りされ、
お互いの作品についてのお話など。


円城さん「酉島さんは、SFジャンルとしては“人類にはまだ早い系”なので、
      量を書くか人類に擦り寄るしかないですよ」

酉島さん「えっと・・・・」

円城さん「まあ、擦り寄るより量を書いた方が簡単じゃないですか」

酉島さん「ううん・・・・(困)」

個人的に、ここらへんのお二方のやり取りがめちゃくちゃ面白かったw(゚▽゚*)



●普通に生活してる人を書きたい●


トーク全般を通してわたしが一番印象に残ったのが

「特別な人じゃなくて、普通に生きてる人の話を書きたいんです」という話。


酉島さん「例えば、僕らだって冷蔵庫の仕組みを知ってるわけじゃないけれども、
普通に冷蔵庫を使って生活してるわけでしょう。
それなのに、(小説の中で)冷蔵庫の説明が延々と続くのはおかしいと思って」


『皆勤の徒』を読んでいる最中、造語やら世界観やらについて、
おそらく意図的に説明を省いてあるんだろうなあとぼんやり思っていましたが、
この例えでなんかいろいろと腑に落ちました。

世間一般で言われるSFというジャンルは、
その(現実とは異なる)世界のシステムだったり宇宙船や人工知能といった
未知の要素が面白さの一つになるんだろうけれど、
酉島さんの場合は「未知の要素」そのものではなくて、「未知」を描く際の
発想や物語を構築していくための視点が、世間一般のそれとはまったく違っていて、
それがあの独特な世界の魅力なんだろうな、と。



●影響を受けたもの●


 参加者からの質問コーナーや、トークの中でもたびたび話題になっていた、
 酉島さんが影響を受けた作家や作品など。
「まあ数えきれないくらいいろいろありますけど・・・」と前置きがありましたが、
 具体的に名前が出たものを列挙しときます。


・小栗虫太郎、久生十蘭、安部公房の作品。

・沼正三『家畜人ヤプー』
・山尾悠子『夢の棲む街』(「洞の街」はこの作品のオマージュだそう)

・ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』
・ジョージ・アレック エフィンジャー『重力が衰えるとき』
・ピエール・マッコルラン『恋する潜水艦』

・ズジスワフ・ベクシンスキー
・H・R・ギーガー


(ベクシンスキーはめっちゃ納得したww)


●お宝争奪戦ジャンケン大会●


イベントの最後は、酉島さんがいくつか用意してくださった参加者への
お土産争奪戦!ヾ(o゚Д゚o)ノ゙


・酉島さんのサイン・落款入りイラスト3点
・酉島さんお手製の、ミニ百々似2点
・酉ビュート


ファン垂涎のお宝をめぐる、熾烈なジャンケン大会の末、

イラストげっと !!✧\٩( 'ω' )و // ✧



NOVA+ バベル: 書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)
宮部 みゆき 月村 了衛 藤井 太洋 宮内 悠介 野崎 まど 酉島 伝法 長谷 敏司 円城 塔
河出書房新社
売り上げランキング: 4,119

『NOVA+ バベル』収録の「奏で手のヌフレツン」の挿画!!
いやー、もうこれわたし、今年の分の運使い果たしたね(゚▽゚*)
悔いはないけどね(゚▽゚*)



イベント終了後に、少しだけお話させていただく時間も設けていただき、
ちゃっかり持参した単行本にもサインをいただきました(*ꆤ.̫ꆤ*)




















おまけに百々似まで書いてくださったーああああ嬉しい。・゚(゚⊃ω⊂゚)゚・。


もちろんここに書ききれてないお話もいっぱいあって、貴重なラフ画なども
見せていただき、本当に楽しい、夢のような2時間でした(*´ェ`*)

またお話聞かせていただく機会があれば、是非参加したいです。
もちろん、著作もずっと追っかける!=≡Σ((( っ゚∀゚)っ

「長編のお話もいくつか来ているし、毎日書いているんだけど進まなくて・・」
というお話をされていたので、
サインをいただくときに「ず・・ずっと待ってます!」て言ってしまいましたw

ええ、出るまで待ちますよ!長編!!


リズールにも初めて行きましたが、壁一面の本棚に囲まれた 
「読書人の巣」ってかんじで素敵なお店でした。
ビブリオバトルとか、毎月いろんなイベントがやっているようなので、
トークイベント以外でも参加してみたいです。






神を見た犬 (光文社古典新訳文庫)


とつぜん出現した謎の犬におびえる人々を描く表題作。老いたる山賊の首領が手下にも見放され、たった一人で戦いを挑む「護送大隊襲撃」…。モノトーンの哀切きわまりない幻想と恐怖が横溢する、孤高の美の世界22篇。 

想像してみる。
仕立てたばかりの新品のスーツのポケットに何気なく手を入れると、
1枚の紙幣が出てくる。
仕立て屋の手違いかと訝しんでみるが、もう一度手を入れると、また1枚。

ポケットからは無限に紙幣が出てくる。
夢中で金を取り出しているうちに、いつの間にか部屋は大金に埋もれる。

翌日のニュースで、昨日自分がポケットから出した額とピッタリ同じ金額が
銀行から強奪されたと騒ぎになっている。
さあ、部屋に積まれた大金とニュースを見比べて、自分ならどうするか。



収録されている一篇「呪われた背広」の導入がだいたいこんな感じなんだけど、
どうしたって「自分ならどうするか」ということを考えずにはいられない。
 
セス・フリードの『大いなる不満』を読んだ時もずっと考えていたんだけど、
どんな時代に生まれようが、どんな国に生まれようが、神を信じようが信じまいが、
結局のところ、人間って同じことで悩み苦しむ一生なんだよな、と。

  欲と、自意識と、老い・死への恐怖。

どうせ逃れられないのなら、悩むことは無駄なんだろうか。
なんかこれ、くよくよしている時に読むといいのかもしれないな。
一切無駄のないストーリーテリングの中に人類普遍の悩みがユーモアたっぷりに
描かれている。

22篇すべて傑作だった。素晴らしい。


「コロンブレ」「七階」「風船」「呪われた背広」「マジシャン」が 特にお気に入り。









 「フランシス・ハ」観ました!

非モテばんざい\(^o^)/


バレエへの情熱はあるけれど才能はなく、
大人ぶってもなんか恰好がつかないし、
老け顔のせいで「歳のわりにしっかりしてないのね」なんて言われちゃうし、
お金はないし掃除は嫌いだし
その割に見栄っ張りで意地っ張りで自業自得のドツボにはまるし
まぁとにかくやることなすことタイミング悪いし
そうそう都合よく王子様が現れるわけないし?

こんな主人公のフランシスの、このパッとしなさというかどんくささというか
コミュ障っぷりが、いとしいやら刺さるやら。
おうおう、リア充ひっこめー!ヾ(o゚Д゚o)ノ゙

フランシスを演じるグレタ・ガーウィグの、この絶妙にちょっともっさい感じ、
ルームシェアしてる男友達(イイヤツ)にも往来で会った時に
「後ろ姿ですぐわかったよーそのノシノシ歩き!」
なんて言われちゃう非モテっぷりが!!キュート!

お互いに大好きで大好きで、いつも一緒にくっついている
親友&ルームメイトのソフィーとの関係や、
他の友達との微妙な距離感とか、
ダンサーを辞めたくないけど所属するバレエカンパニーからは暗に転職を打診されたり、
27歳の「ふつうの」女性像としてあまりにもリアル。

わたしはそういう年齢はもう通り過ぎちゃったので、わりと冷静にフランシスを愛でることができたけど、これ三十前の微妙な時に見てたら
たぶん笑えないし、正直落ち込んだと思う・・・。そのくらいのリアルさ。


デヴィッド・ボウイ『モダン・ラブ』が流れる中、
フランシスがニューヨークの街を疾走するところ、
もうこのシーンだけで傑作でした。





赫獣(かくじゅう)

「赫獣」による犠牲者…1000名以上、始まりは、山中で発見された、「何か」に噛み切られた人間の掌だった。新たなモンスター小説の誕生。

岸川真 『赫獣』読了。

とにかく死ぬ。めっちゃ死ぬ。女も子供も容赦なく奴らの餌食。
凄惨なシーンが怒涛のように続くにも関わらず、ぐいぐい引き込まれて
一気に読んでしまった。

映画でいうなれば
「ジュラシック・パーク」とか「ディープ・ブルー」とか「ザ・グリード」とか
「テンタクルズ」とか「スクワーム」とかね、
あのへんにミステリ要素とオヤジのロマンチシズムをぶち込んだ感じ。


ホラーやサスペンス、パニック映画のお約束として
「頭の悪いカップル」「横柄なエリート」「せこい小悪党」が真っ先に死ぬと
相場が決まっているが、舞台が現代日本であるためステレオタイプな雑魚キャラがおらず、
結構重要っぽいキャラがどんどこ死ぬので、
一体だれが生き残れるのかという緊張感が最初から最後まで続く。


プロローグからして、この謎の怪物の正体はある程度予想できるのだが
謎が解明されていくにつれて、新たな謎が生まれ、それがまた絶望感を生む。
読み進めるにつれて、この獣の禍々しさ、血生臭さが活字から立ち上ってくるようで、
この臨場感を映像ではなく小説で表現できるのはすげえなーと思った。



坂野刑事の生い立ちや、汐留刑事が再び現場へ赴くまでの心理描写など、もっと人間ドラマが読みたかったとこもあるけど、
まあ終盤のテンポが悪くなるから削ったのかな~。


『進撃の巨人』や『テラフォーマーズ』が好きだーっていう人には
おすすめ。